京橋のバイオインフォマティシャンの日常

まずは、データ分析、コマンドラインのメモとして

10倍量のヨーグルトを作りながら、菌の増殖曲線を考えてみた件

最近、ヨーグルト作りにハマっている。

種菌(いわゆる、0.1L 飲むヨーグルト)から、10倍量(1L)のヨーグルトを作っている。飲むヨーグルト1本は、だいたい100円くらいなので、10倍量で1000円となって、必要経費を引いても、だいたい700円弱お得である。また、ヨーグルトの酸味や固さを自分の好みにできる。

今回、「ガセリ菌を使った10倍量(1L)ヨーグルトの作製法」と「菌の増殖曲線」について検討したことを、実験ぽく紹介する*1

10倍量ヨーグルト作製のマテリアル

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10倍量ヨーグルトの作製プロトコール

1. 1L プラビーカーに対して、スパチュラ3-4杯分のグルコースを添加する。おそらく15-20gくらい。

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2. ガセリ菌の種菌を全量加えて、振盪混合する(いわゆる、振って混ぜる)。

f:id:skume:20200613022300p:plain:w250

3. 培地で、1L目盛までメスアップです(いわゆる、牛乳を900mL入れる)。

f:id:skume:20200613022304p:plain:w250

4. 蓋を軽めに閉めて、35℃の恒温器(いわゆる、ヨーグルトメーカー)内で静置して、オーバーナイト・インキュベート(一晩培養)する。

f:id:skume:20200613022316p:plain:w250

ガセリ菌の場合、だいたい、12-15時間ほどインキュベートすると、良い感じの固形ヨーグルトが出来あがる。

5. 4℃で保管して(冷蔵庫で保管)しておく。そして、官能評価を行う。いわゆる、食う。

種菌の増殖曲線の検討

微生物の増殖曲線について調べてみると、 ゴンペルツの増殖曲線 (Gompertz growth curve)というのがあるようだ。

もともと、1832年に、Benjamin Gompertz によって、人間の死亡率を推定するためのモデル式として、「ゴンペルツ関数(Gompertz function)」が提案された。

Gompertz, B. "On the Nature of the Function Expressive of the Law of Human Mortality, and on a New Mode of Determining the Value of Life Contingencies." Phil. Trans. Roy. Soc. London 123, 513-585, 1832.

それから、さらに100年後、1932年に、Charles Winsorによって、微生物の成長過程を説明するための方程式として使用されたようだ。

www.pisces-conservation.com

ゴンペルツの増殖曲線の一般式は、以下のように定義される。


A \cdot exp(-B \cdot exp(-k (t - I)))


このとき、

A は、飽和(上限)時の値, A > 0

B, k は、成長速度係数 (Growth velocity factor), k > 0, B > 0

I は、変曲点

t は、相対時間

をそれぞれ意味する。

今回、この増殖曲線について、 成長速度係数 k を、0.75、0.5、0.3、0.2、0.1 の5パターンに設定して、 R上でシミュレーションしてみた。

## 固定パラメータの設定
# A: 飽和(上限)時の値, A > 0 
A <- 10
# B: 成長速度係数, B > 0
B <- 7
# I: 変曲点
I <- 5
# t: 相対時間
t <- seq(0, 20, 0.5)

## パラメータ k の設定
# 成長速度係数 k = 0.75
k1 <- 0.75
Lt1 <- round(A*exp(-B*exp(-k1*(t-I))), 3)

# 成長速度係数 k = 0.5
k2 <- 0.5
Lt2 <- round(A*exp(-B*exp(-k2*(t-I))), 3)

# 成長速度係数 k = 0.3
k3 <- 0.3
Lt3 <- round(A*exp(-B*exp(-k3*(t-I))), 3)

# 成長速度係数 k = 0.2
k4 <- 0.2
Lt4 <- round(A*exp(-B*exp(-k4*(t-I))), 3)

# 成長速度係数 k = 0.1
k5 <- 0.1
Lt5 <- round(A*exp(-B*exp(-k5*(t-I))), 3)

## データフレームに変換
Data <- data.frame(t, Lt1, Lt2, Lt3, Lt4, Lt5)

par(family="HiraKakuProN-W6", lwd=1.5, 
    cex=1, mgp=c(2.5, 1, 0), mai=c(0.75, 0.75, 0.8, 0.25))
plot(Data$t, Data$Lt1, type="l", col="#0078B9",
     main=expression(A %.% exp(-B %.% exp(-k*(t - I)))),
     xlab="time (相対時間)",ylab="Values of Gompertz growth model")
points(Data$t, Data$Lt2, type="l", col="#FF7700")
points(Data$t, Data$Lt3, type="l", col="#00A400")
points(Data$t, Data$Lt4, type="l", col="#E90017")
points(Data$t, Data$Lt5, type="l", col="#9D62C3")
20200528071149
ゴンペルツ増殖曲線の作図

さらに、plotlyでも作図してみた*2

if(!require("plotly")){install.packages("plotly")}; library(plotly)
fig <- plot_ly(Data, x = ~t)
fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt1, name = 'Lt1', mode = 'lines')
fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt2, name = 'Lt2', mode = 'lines')
fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt3, name = 'Lt3', mode = 'lines')
fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt4, name = 'Lt4', mode = 'lines')
fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt5, name = 'Lt5', mode = 'lines')
fig <- fig %>% layout(xaxis = list(title = 'time'),
                      yaxis = list(title = 'Values of Gompertz growth model'))
fig
20200528071149
Poltlyによるゴンペルツ増殖曲線の作図

まとめ

カゼリ菌の10倍量ヨーグルトは、だいたい12時間ほどで固まる。 シミュレーションの結果を考慮すると、種菌はLt1Lt2くらいスピードで増殖して、 牛乳に含まれるカゼインの酸凝固が進むのではと推測される。

参考文献

Gompertz sigmoidal model の参考文献

Rui Yuan et al, Modified Gompertz sigmoidal model removing fine-ending of grain-size distribution, 2019.

https://www.degruyter.com/view/journals/geo/11/1/article-p29.xml

journals.plos.org

www.peko-step.com

stat.ethz.ch

www27.cs.kobe-u.ac.jp

*1:ガセリ菌株の方が、某R1菌株よりも、長期培養した際の酸味が少ないので、10倍量ヨーグルト作製時には扱いやすいと思う

*2:どちらも、plotly図にリンクしている